この記事の対象読者

  • 「うちは相続税がかかるほど財産がないから関係ない」と思っているものの、本当にそうか確かめたい方
  • 親が元気なうちに、何をどこまで確認しておけばよいか分からない方
  • 親にお金や財産の話を切り出しにくいと感じている方

先に結論

  • 相続税の基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」です(国税庁)。たとえば法定相続人が3人なら4,800万円です。
  • 遺産の課税価格の合計がこの額以下なら、相続税はかからない計算です。ただし、財産の評価方法や特例の適用によって判断が変わる場合があるため、目安として使い、判断に迷うときは税理士や税務署に確認します。
  • 相続税がかからなくても、銀行口座・不動産・保険などの手続きは必要です。財産の「金額」より先に、「どこに何があるか」を家族で確認しておくと、手続きの負担を減らせる可能性があります。
  • 相続税の申告と納税の期限は、原則として亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内です(国税庁)。相続放棄の申述は、相続の開始を知ったときから3か月以内です(裁判所)。

制度・条件

相続税の基礎控除額

法定相続人の数基礎控除額計算
1人3,600万円3,000万円+600万円×1
2人4,200万円3,000万円+600万円×2
3人4,800万円3,000万円+600万円×3
4人5,400万円3,000万円+600万円×4
5人6,000万円3,000万円+600万円×5

出典:国税庁 タックスアンサー No.4152「相続税の計算」(令和8年4月1日現在法令等)。確認日 2026-10-11。

  • 法定相続人:民法で決まっている相続人です。数え方には次のルールがあります。
  • 相続を放棄した人がいても、放棄がなかったものとした場合の人数で数えます。
  • 養子は、実子がいる場合は1人まで、実子がいない場合は2人まで数に入れます。
  • 課税価格の合計額:相続などで取得した財産の価額から、債務や葬式費用などを差し引くなどして求めた金額です。財産の評価方法は財産の種類ごとに決まっているため、預金残高や購入時の価格とは異なる場合があります。

死亡保険金の非課税限度額

項目内容
計算式500万円×法定相続人の数
対象被相続人(亡くなった人)が保険料の全部または一部を負担していた死亡保険金で、相続人が受け取ったもの
注意相続人以外が受け取った死亡保険金には適用されません。受け取る側の「相続人」には、相続を放棄した人は含まれません

出典:国税庁 タックスアンサー No.4114「相続税の課税対象になる死亡保険金」(令和8年4月1日現在法令等)。確認日 2026-10-11。

期限

手続き期限出典
相続放棄の申述自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内。申述先は被相続人の最後の住所地の家庭裁判所裁判所「相続の放棄の申述」
相続税の申告・納税被相続人が死亡したことを知った日(通常は死亡の日)の翌日から10か月以内。期限が土日祝日などの場合は翌日国税庁 No.4205「相続税の申告と納税」

期限を過ぎて納めると延滞税がかかる場合があります(国税庁)。手続きの詳細や例外は、各出典と専門家に確認してください。

具体例・比較表

架空の例:相続税がかかるかの目安

架空の例です。財産の評価額は単純化した仮定で、実際の評価方法(土地の評価、特例など)は考慮していません。相続税がかかるかどうかの判断は税理士・税務署に確認してください。

  • 父が亡くなり、相続人は母と子2人(法定相続人3人)
  • 基礎控除額:3,000万円+600万円×3人=4,800万円
財産の内訳(仮定の評価額)ケースAケースB
預貯金1,500万円2,500万円
自宅(土地・建物)2,000万円3,000万円
死亡保険金(父が保険料を負担、相続人が受取)1,000万円2,000万円
死亡保険金の非課税部分(限度額は500万円×3人=1,500万円)−1,000万円(保険金額1,000万円までが非課税)−1,500万円
課税価格の合計(債務・葬式費用は0円と仮定)3,500万円6,000万円
基礎控除額との比較4,800万円以下4,800万円を1,200万円上回る
  • ケースAは、この仮定では基礎控除額以下です。それでも、預金口座の解約・名義変更、自宅の登記、保険金の請求などの手続きは必要です。
  • ケースBは、この仮定では基礎控除額を上回ります。実際の税額は、評価方法や特例の適用、分け方で変わるため、本記事では計算しません。
  • ケースAは死亡保険金が1,000万円で限度額1,500万円を下回るため、保険金の全額が非課税の範囲に入る計算です。ケースBは2,000万円のうち1,500万円が非課税、500万円が課税価格に入る計算です。

計算は Python で検算しました。

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判断の手順

  • 法定相続人の人数を数える:配偶者・子(養子を含む)など。放棄の予定があっても人数は変わりません。分からないときは専門家に確認します。
  • 基礎控除額を出す:3,000万円+600万円×人数。
  • 親が元気なうちに、家族で確認したい4つを話す(下のチェック表)。金額より先に「どこに何があるか」を確認します。
  • おおまかな財産額と基礎控除額を比べる:近い・上回る可能性があるときは、評価方法や特例を含めて税理士に相談します。
  • 期限を家族で共有する:相続放棄は3か月以内、相続税の申告・納税は10か月以内(原則)。
  • 法律・税務の判断は専門家へ:遺言、贈与、不動産の名義、相続税の申告は、税理士・弁護士・司法書士など内容に合う専門家に確認します。

家族で確認したい4つ(チェック表)

確認すること具体例書き残す内容書き残さない内容
① 利用している金融機関銀行、証券会社、ネット銀行金融機関名・支店名暗証番号・パスワード
② 不動産とローン自宅、土地、賃貸物件、住宅ローンや借入の有無所在地、ローンの借入先―
③ 保険の契約先生命保険、医療保険、火災保険保険会社名、契約者・受取人ログイン情報
④ 書類と連絡先の保管場所通帳、証券、契約書、権利証、かかりつけ医保管場所、連絡先暗証番号・パスワード

暗証番号やパスワードを、家族全員が見られる紙やメッセージにそのまま書くのは避けます。まず「情報がどこにあるか」と安全な保管方法を伝えます。ネット銀行やデジタルサービスは、もしものときの確認方法を家族で話しておきます。

話を切り出しにくいとき

  • 財産の金額を直接聞くより、「入院したときの連絡先」「保険証券の場所」など、手続きの実務から話す方法があります。
  • 一度ですべてを聞こうとせず、連絡先や書類の場所を共有できれば一歩前進と考えます。

よくある誤解

  • 「財産が基礎控除以下なら、何も手続きしなくてよい」:相続税がかからなくても、預金の解約・名義変更、不動産の登記、保険金の請求などの手続きは必要です。
  • 「相続放棄をすれば、基礎控除の人数が減る」:基礎控除の計算では、放棄がなかったものとした人数で数えます(国税庁)。
  • 「死亡保険金はすべて非課税」:非課税は「500万円×法定相続人の数」までで、相続人以外が受け取った場合は適用されません(国税庁)。
  • 「家族で話すなら、暗証番号も共有しておくべき」:暗証番号やパスワードをそのまま書き残すと、悪用されるおそれがあります。所在と保管方法を共有します。

よくある質問

Q1. 法定相続人の数に、相続を放棄した人は入りますか? A. 基礎控除額の計算では、放棄がなかったものとした場合の人数で数えます(国税庁 No.4152)。

Q2. 養子は何人まで数えられますか? A. 実子がいる場合は1人まで、実子がいない場合は2人まで法定相続人の数に含めます(国税庁 No.4152)。

Q3. 相続税の申告期限はいつですか? A. 被相続人が死亡したことを知った日(通常は死亡の日)の翌日から10か月以内で、納税も同じ期限です(国税庁 No.4205)。

Q4. 死亡保険金の受取人を決めるときに考えることは? A. 非課税限度額は相続人が受け取った場合に適用されます。死亡保障をいくら持つかは死亡保障の必要額の記事で扱っています。受取人の指定や税務の判断は、保険会社や税理士に確認してください。

Q5. 誰に相談すればよいですか? A. 相続税の計算・申告は税理士、遺産分割の争いや遺言は弁護士、不動産の名義変更(登記)は司法書士が主な相談先です。何から相談すればよいか分からないときは、家計の状況とあわせて整理するところから始める方法もあります。

今日確認すること

  • [ ] 法定相続人の人数を数え、基礎控除額を出した
  • [ ] 親が利用している金融機関の名前を、分かる範囲で書いた
  • [ ] 自宅・土地とローンの有無を確認した
  • [ ] 保険証券や通帳など書類の保管場所を親に聞いた(暗証番号は書き残さない)
  • [ ] 相続放棄3か月・相続税申告10か月の期限を家族で共有した

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本記事は一般的な情報提供を目的としています。制度や商品の詳細は公式情報をご確認ください。個別の判断は、ご自身の状況に応じて専門家へご相談ください。