まず「1年間」で収支を確かめる

「毎月そんなに使っていないはずなのに、貯金が増えない」。家計の見直しを考える多くの人が、ここでつまずきます。

原因は、年に数回だけ出ていくお金にあることが少なくありません。だから最初は節約ではなく、1年分の収支を確かめます。そのうえで、一度変えれば効果が続く固定費から手をつけ、保険は「削る」ではなく重なりと不足を確かめ、残ったお金を給料日に先に分ける。この順番なら、我慢を増やさずに続けやすくなります。

毎月の家計簿が黒字でも、1年で見ると貯金がほとんど残っていないことがあります。理由は、毎月は出ていかない支出があるからです。

特別費を書き出す

年に数回だけ出ていく支出を「特別費」としてまとめます。たとえば次のようなものです。

  • 車・住まい:自動車税、車検、車の保険の年払い、固定資産税、火災保険の更新
  • 行事・交際:帰省や旅行、冠婚葬祭、お年玉、誕生日やクリスマス
  • 子ども:入学準備、制服、習い事の発表会や合宿、修学旅行の積立
  • 暮らし:家電の買い替え、年払いのサブスクリプション、年会費

書き出すときは、記憶だけに頼らず次のものを見ます。

  • 過去12か月分のカード明細と通帳:年に1回だけの引き落としを探します
  • スマートフォンのカレンダーや写真:帰省や行事など、現金で払ったものを思い出す手がかりになります
  • 届いている通知:自動車税や固定資産税の納付書、保険の更新案内

それぞれの金額を、何月に出ていくかとあわせて書き出すと、「お金が足りなくなりやすい月」も見えてきます(「毎月黒字なのに貯金が増えない?年払いを見つける年間支出カレンダー」)。

架空の家計で見てみる

※ 以下は説明のための架空の例です。実在の家計や相談事例ではありません。 夫婦と子ども1人。手取りは月35万円、ボーナス(手取り)は年50万円。毎月の支出は33万円、特別費は年60万円。

項目金額(1年)計算
収入470万円35万円×12か月+50万円
支出456万円33万円×12か月+特別費60万円
1年で残るお金14万円470万円-456万円

毎月は2万円の黒字に見えても、特別費を含めると1年で残るのは14万円です。「貯金が増えない」の正体は、この特別費でした。

まずは、この表を自分の数字で作ってみてください。どこを見直すかは、ここから決まります。

見直しは「一度変えれば続く」支出から

1年の収支がわかったら、毎月決まって出ていく固定費を見ます。食費などを削るのは毎日の我慢が必要ですが、固定費は一度手続きをすれば、翌月以降も効果が続きます。

通信費は「使っている量」と「契約の条件」を確かめる

  • 毎月のデータ使用量を見る:契約している会社のアプリやマイページで、過去数か月の使用量を確認します
  • プランと比べる:使用量より大きなプランになっていないか、使っていないオプションがついていないかを見ます
  • 変える前に条件を確かめる:プランの変更や乗り換えでかかる手数料、端末の分割払いの残り、家族割やセット割が外れるかを確認します

プランを変えるだけで済む場合もあれば、乗り換えたほうが安くなる場合もあります。手続きの手間や条件も含めて比べます。

サブスクリプションは「この3か月で使ったか」で選ぶ

  • カード明細とスマートフォンの「サブスクリプション」の画面から、契約中のサービスを一覧にします
  • この3か月で使っていないものは、解約の候補にします
  • 年払いのものは、次の更新日をカレンダーに入れておくと、更新前に必要か考えられます

架空の家計では、こう変わりました。

項目見直し前(月)見直し後(月)何をしたか
通信費(2人分)16,000円8,000円使っているデータ量に合うプランへ変更
サブスクリプション4,000円1,500円使っていない2つを解約
差—月10,500円1年で12万6,000円

住居費や車の費用も固定費ですが、引っ越しや買い替えには時間とお金がかかります。すぐに変えやすいものから始め、大きな支出は次の更新や買い替えのタイミングで考えるほうが無理がありません。

保険は「削る」ではなく、重なりと不足を確かめる

保険料も毎月の固定費です。ただ、通信費と違って「安いほうに替えれば終わり」とはいきません。保障を減らしすぎると、いざというときに困るからです。逆に、必要な保障が足りていないことがわかる場合もあります。

保険証券で見るところ

加入している保険の証券や契約内容のお知らせを集め、次の項目を一覧にします。

見るところ確かめること
保障の種類死亡、医療(入院・手術)、がん、働けないときの収入など、何に備えているか
保障の金額受け取れる金額(死亡保険金、入院1日あたりの額など)
保障の期間いつまで保障が続くか(10年、60歳まで、一生など)
更新の有無更新のときに保険料が上がるタイプか
保険料と払込期間毎月いくらを、いつまで払うか
特約主契約に追加している保障。同じような特約が複数の保険で重なっていないか

公的な制度と並べて見る

一覧ができたら、病気やけが、万一のときに使える公的な制度や勤務先の制度と並べます。

保険と制度で同じものに二重に備えていないか、逆に足りないところがないかを見ます。

架空の家計では、確認した結果、保障の重なりは見つからず、保険はそのままにしました。見直しの結果、保険料が下がる家庭もあれば、変わらない家庭、むしろ保障を足したほうがよい家庭もあります。

なお、保険をやめると、年齢や健康状態によっては同じ条件で入り直せないことがあります。解約を考える場合は、代わりの備えを決めてからにします。くわしい進め方は「保険の見直しで家計はどう変わる?」で説明しています。

浮いたお金は、給料日に先に分けておく

見直しで浮いたお金は、そのままにしておくと、いつの間にか使ってしまいがちです。金融庁も、先に貯蓄に回し、残りのお金でやりくりする方法を紹介しています。

架空の家計では、毎月の支出が33万円から31万9,500円になり、1年で残るお金は14万円から26万6,000円に増えました(470万円-(31万9,500円×12か月+60万円))。

1年で残る26万6,000円を12か月で割ると、約2.2万円です。そこで、給料日に月2万円を別の口座へ自動で移すことにしました。

先取りの仕組みを作る

  • 自動の振替を使う:給与の入る口座から、貯蓄用の口座へ毎月決まった日に移す設定をします。銀行によって、定額自動入金や自動振替などのサービスがあります
  • 勤務先の制度を確かめる:財形貯蓄など、給与から天引きで積み立てる制度がある勤務先もあります
  • 特別費は別に分ける:架空の家計では、特別費の60万円をボーナスとあわせて特別費用の口座で管理し、毎月の生活費の口座と混ざらないようにしました

使う時期で置き場所を変える

  • いつでも使う可能性があるお金(急な出費、家電の故障):すぐ引き出せる預金
  • 数年以内に使うお金(車の買い替え、入学):値動きのない預金など
  • 10年以上先に使うお金(老後の資金):値下がりに耐えられる範囲で、積立投資も選択肢

投資は元本が保証されず、値下がりすることもあります。積立額の決め方は「NISAは月いくら積み立てる?」で説明しています。

今日からできることと、よくある質問

一度に全部やる必要はありません。1つずつ、次の順で進めてみてください。

  • 過去12か月の通帳とカード明細から、特別費を書き出して1年分を合計する
  • 1年間の収入と支出の表を作り、「1年で残るお金」を出す
  • 通信費のデータ使用量とプラン、使っていないサブスクリプションを確認する
  • 保険の証券を集めて、保障の種類・金額・期間・保険料を一覧にする
  • 給料日に先に分ける金額を決め、自動の振替を設定する

Q. 家計簿をつけていなくても始められますか? A. 始められます。この方法は、毎日の記録より先に、通帳とカード明細で1年分の大きな流れをつかむことから始めます。

Q. 夫婦で収入や口座が別々です。どうすればいいですか? A. まずはそれぞれの収入と、共通の支出(住居費、食費、子どもの費用など)を誰がいくら払っているかを書き出します。特別費は、共通の口座や、どちらが払うかを決めておくと、見落としが減ります。

Q. 見直しても、1年で残るお金がマイナスでした。 A. 特別費のうち、減らせるもの・時期をずらせるものがないかを見ます。固定費を見直しても足りない場合は、住居費や車など大きな支出を、次の更新や買い替えのときに考えます。

家計の数字を並べてみても、「どこから手をつけるのが自分に合うのか」が決めきれないこともあります。年間の収支や保険の重なりと不足を一緒に整理したい方は、ご相談ください。保険の加入や投資を前提にした相談ではありません。

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本記事は一般的な情報提供を目的としています。制度や商品の詳細は公式情報をご確認ください。個別の判断は、ご自身の状況に応じて専門家へご相談ください。