NISAの仕組みと、上限の意味
「NISAは上限の月10万円まで使ったほうがいいの?」「みんな月いくら積み立てているの?」。始めようとすると、金額で迷う人は多いはずです。
答えは家計によって違います。上限は「使える最大の金額」で、目標ではありません。生活費、数年以内に使うお金、急な出費に備える現金を先に分け、残ったお金の中から、値下がりしても続けられる額を選びます。その計算のしかたを、架空の家計で見ていきます。
※2026年10月時点の金融庁の情報による一般的な説明です。特定の商品をすすめるものではありません。
まず、NISAで投資できる金額の上限と、基本のルールを確認しておきます(金融庁「NISAとは?」、2026年10月20日確認)。
| 項目 | つみたて投資枠 | 成長投資枠 |
|---|---|---|
| 1年間の上限 | 120万円(月10万円に相当) | 240万円 |
| 2つの枠の併用 | できる(1年で合計360万円まで) | — |
| 一生で持てる上限 | 2つの枠の合計で1,800万円 | うち1,200万円まで |
| 対象になる商品 | 長期の積立・分散投資に適した一定の投資信託(金融庁が一覧を公表) | 上場株式・投資信託など(一部の商品は対象外) |
| 非課税で持てる期間 | 無期限 | 無期限 |
金融庁のページでは、整理・監理銘柄、信託期間20年未満や毎月分配型の投資信託、デリバティブ取引を用いた一定の投資信託などが、除外される商品として示されています。つみたて投資枠の対象商品は、金融庁のサイトで一覧を確認できます。
2つの枠は一緒に使えますが、両方を使う必要はありません。上限は「ここまでなら非課税で投資できる」という枠で、上限まで使わなくても不利になる決まりはありません。
非課税でも、元本は保証されない
NISAは投資の利益に税金がかからない制度で、元本が保証される制度ではありません。金融庁も、株式や投資信託には元本割れのおそれがあると説明しています。
上限いっぱいに積み立てて、近く使うお金まで値動きのあるものに置いてしまうと、使いたいときに値下がりしていて困ることがあります。積立額を決めるときは、「いくら投資できるか」より先に「いつ使うお金か」を考えます。
積立額は「残るお金」から、近く使う現金を除いて決める
積立額を決める前に、毎月の手取りを次の4つに分けて考えます。
| 分け方 | 例 | 置き場所の考え方 |
|---|---|---|
| ① 毎月の生活費 | 食費、住居費、通信費(年払いの支出の月割りも含める) | 普通預金 |
| ② 数年以内に使うお金 | 車の買い替え、引っ越し、入学、住宅の頭金 | 値動きのない預金など |
| ③ 急な出費に備える現金 | 病気、休職、家電の故障、冠婚葬祭 | すぐ引き出せる預金 |
| ④ 長く使う予定のないお金 | 10年以上先の老後の資金など | 値動きを理解したうえで、NISAでの積立を検討できる |
NISAに回すのは④からです。①〜③を先に確保しておくと、値下がりしたときに慌てて売る必要がなくなります。
①の生活費は「年払いの月割り」を入れて出す
①を少なく見積もると、毎月の残りが実際より多く見えてしまいます。自動車税や車検、帰省、家電の買い替えなど、年に数回だけ出ていくお金も、1年分を12で割って毎月の生活費に入れておきます。出し方は「家計の見直しは何から?」で説明しています。
②の「数年以内」は、使う時期と金額を書き出す
②は「いつ・何に・いくら」を書き出し、必要な額を残りの月数で割って毎月の準備額を出します。使う時期が5年以内くらいのお金は、値下がりしてから回復するまで待てないことがあるため、値動きのない預金などで準備する考え方があります。
③の急な出費に備える現金は、いくら残す?
③の「急な出費に備える現金」をいくら持つかに、決まった基準はありません。生活費の何か月分かで考える方法がありますが、何か月分にするかは家庭によって変わります。次のような点で考えます。
| 確かめること | 現金を多めに考えたい場合 | 少なめでもよい可能性がある場合 |
|---|---|---|
| 働き方 | 自営業・フリーランス、収入の変動が大きい | 会社員で収入が安定している |
| 家計の収入源 | 収入が1人分 | 共働きで、1人が休んでも生活できる |
| 休んだときの給付 | 傷病手当金がない、勤務先の休業中の保障がない | 傷病手当金(給与のおおむね3分の2)や勤務先の保障がある |
| 住まい・家族 | 持ち家で修繕の予定がある、子どもが小さい | 大きな出費の予定が少ない |
会社員の健康保険には、病気やけがで休んだときの傷病手当金があります。自分が休んだときにどのくらいの収入が残るかは「傷病手当金はいくら・いつから?」で確かめられます。
③がまだ足りない場合は、NISAより先に③を増やすほうが、家計は安定しやすくなります。一度に貯めるのが難しければ、期間を決めて少しずつ積み増します。
架空の家計で計算してみる
※ 以下は説明のための架空の例です。特定の家計の目安や、将来の運用結果を示すものではありません。 会社員の夫婦(片働き)。手取りは月30万円。生活費は月24万円(年払いの支出の月割りを含む)。 3年後に車の買い替えで90万円が必要。急な出費用の現金は今120万円あり、収入が1人分であることから、生活費6か月分の144万円まで増やしたい。
| 項目 | 毎月の金額 | 計算 |
|---|---|---|
| 毎月残るお金 | 6万円 | 手取り30万円-生活費24万円 |
| ② 車の買い替え用(預金) | 2万5,000円 | 90万円÷36か月 |
| ③ 急な出費用の現金を増やす(預金) | 1万円 | 不足24万円(144万円-120万円)÷24か月 |
| ④ NISAに回せる候補 | 2万5,000円 | 6万円-2万5,000円-1万円 |
この例では、NISAの候補は月2万5,000円、1年で30万円です。つみたて投資枠の上限120万円の4分の1ですが、それで問題ありません。
時間がたつと、回せる額は変わる
- 今〜2年後:②2万5,000円、③1万円 → NISAの候補は2万5,000円
- 2年後〜3年後:③が144万円に届き0円に → 候補は最大3万5,000円
- 3年後(車を購入)以降:②も0円に → 候補は最大6万円
2年後に③の準備が終われば月1万円、3年後に車を買えば月2万5,000円が空きます。ただ、そのときに次の②(子どもの進学、住まいなど)が出てくることもあります。空いた分をそのまま積立に回すのではなく、そのたびに「次に使うお金」がないかを確かめてから決めます。
最後は「値下がりしても続けられるか」で決める
計算で出た候補額は、上限の目安です。最後に、次のことを考えて金額を決めます。
- 値下がりしても、積立を止めずに続けられるか:一時的に積み立てた額を下回っても、生活が苦しくならない額にします。
- 売っても損益は消えない:NISAで非課税になるのは利益にかかる税金です。値下がりした状態で売れば、その損失は戻りません。
- 売った分の枠は、すぐには戻らない:売った年の翌年以降に、買ったときの金額(簿価)の分だけ枠が復活します(金融庁)。
候補額より少なく始めて、慣れてから増やすのも1つの方法です。
値下がりしたときに慌てないために
積立を始めると、評価額が積み立てた合計を下回る時期が来ることがあります。そのときに慌てて売ってしまうと、損失が確定します。
- 始める前に、「何に使うお金か」「いつまで使わないか」を書き留めておく
- ①〜③の現金を別に確保しておき、急な出費があってもNISAを売らずに済むようにする
- 評価額を毎日見るのではなく、見直しの時期を決めて確認する
それでも不安で続けられないと感じたら、積立額を下げる、一時的に止めるといった方法もあります。積立の変更方法は金融機関で確認できます。
始める前と、決めたあとに確かめること
口座を開く前に
- NISAの口座は、日本に住む18歳以上の人が開けます(2027年1月からは、つみたて投資枠の年齢の条件がなくなる予定です)
- 口座は1人1口座です。複数の金融機関で同時には開けません
- 金融機関は1年ごとに変えられます(金融庁)
- 金融機関によって、選べる商品、積立の頻度、最低積立額などが違います
積立額を見直すタイミング
積立額は一度決めたら終わりではありません。次のようなときに見直します。
- 年に1回(たとえば年末や誕生月など、自分で決めた時期)
- 収入が変わったとき
- 車や住まい、進学など、大きな出費の予定が変わったとき
- 急な出費で現金を使い、③が減ったとき
積立額を決める前のチェックリスト
- 1か月の生活費(年払いの支出の月割りを含む)を出した
- 数年以内に使う予定のお金を「いつ・何に・いくら」で書き出した
- 働き方や休んだときの給付を確かめ、手元に置く現金の額を家族で決めた
- 毎月残るお金から②③を引いて、NISAの候補額を出した
- 値下がりしても続けられる額か、もう一度考えた
よくある質問
Q. 毎月の残りが少なく、NISAに回すお金がありません。 A. まずは①〜③を整えることが先です。家計の見直しで毎月の残りが増えれば、その中から改めて考えます。少額から積み立てられる金融機関もあります。
Q. 教育費もNISAで準備していいですか? A. 使う時期までの年数で考えます。使うまでに時間がある場合は選択肢になりますが、近づいてから値下がりすると困るため、使う時期が近い分は預金などに移す考え方もあります。比べ方は「学資保険とNISA、教育資金はどっちで準備する?」で説明しています。
Q. 一度に上限まで入れたほうが有利ですか? A. 一度にまとめて投資するか、少しずつ積み立てるかで、結果がどちらがよくなるかは、その後の値動きによって違い、事前にはわかりません。まずは「近く使うお金をNISAに入れていないか」を確かめることが大切です。
計算してみても、「急な出費用の現金はいくら必要か」「教育費や住まいの予定とどう並べるか」で迷うことがあります。家計全体から積立額を整理したい方は、ご相談ください。特定の商品の購入や、運用の成果をお約束するものではありません。
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